その時、私は目が覚めたんだと思う。
何が起こったのかと言えば、なんて事はない。
手に持っていたコーヒーカップを壁に叩きつけ、それが中身を撒き散らしながら割れたというだけだ。
一体全体、なぜそんなことをしたのか。
気が狂ったのではない。壁にGがいたわけでもない。
タバコを持ったまま、コーヒーカップを持ったことでタバコの灰が小指に当たったのだ。思わず腕を振り抜いた。
しまった、と思った。
壁に叩きつけられて粉々になったカップを見つめて私は暫くの間、呆然とした。
何をやってるんだろう。
夜勤明けであったこと、日中一睡もせずに夕方ダーツへ行ったことを鑑みても、やはり私の行動は支離滅裂を極めたものだった。
カップの破片を片付け、ぶちまけたコーヒーを拭き、大きくため息をついてから思った。
気が狂ってるわけでもないのに、コーヒーの入ったカップを壁に叩きつけるのは、いくらなんでも気が狂ってる。
明日はプラスチックの割れないカップを買いに行こう。気が狂った人間が、万が一にもカップを壁に叩きつけても割れないように。